帰 郷

 

 独り物思いに耽り
急に揺れ動く満員列車の雑踏の
寂しい我が身に振り返る
あまりの侘しさに
列車の窓に目を遣れば
見知らぬ町並みが
走馬灯のように去って行く

徐々に故郷へと列車は走る
目を閉じれば昔を想う
故郷を離れ都会に出て来た時の事を

期待と不安が入り混じり
心は複雑に揺れ動き
故郷を離れなければならない
我が身の宿命を思い巡らす

上京の時に駅のホームには
涙を溜めた母が
無言で荷物を持って立っていた
煤けた列車がホームに入り
ただ泣き濡れる母の手から
荷物を受け取り列車に乗り込み
座席に座り車窓から母に声を掛けた

そしてゆっくりと列車が動き始めた
その時母は言葉にならない言葉を
私に向かって叫んでいた
今でもその言葉が何なのか分からない

ふと車窓から外に目を遣れば
懐かしい故郷の景色が見えて来た
そして母との思い出の駅のホームに
列車は到着した

懐かしい故郷の駅も今は無人化され
時の流れに押し遣られ荒れ果てていた
時代の流れの速さと
失っていったものの多さに寂しさを感じる

駅のホームを降り
今は年老いて腰の曲がり掛けた母のいる
懐かしい我が家に帰ろう


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